このブログを検索

Ⅷ【生活文化コラム】09.【昭和レトロなリビング】

【生活文化コラム】09.【昭和レトロなリビング】


 昭和30・40年代の庶民の住宅には、何故か一部屋だけ、洋風の「リビング」と呼ぶ部屋があった。客間、居間、台所などという畳敷き和風の部屋ばかりだったところに、居間を改装したりしてリビングとするのが流行った。

 真ん中には応接三点セット、木目調のベニヤ板張の壁面には、クラシックな大型ステレオ装置、場合によっては大型家具調テレビなども置かれる。中央には織物地のテーブルクロスに、白のレース編みの灰皿敷、その上にクリスタルガラスの重厚な灰皿が置かれる。

 部屋の広さにもよるが、観音開きガラス戸のついた書棚には、読まれることのない百科事典や世界文学全集が収められている。サイドボードにはジョニ黒やカミュ・ナポレオンなど、未開封の高級洋酒、ボード上には高級感ある置時計に、なぜか地球儀があったりする(笑)

 リビングルームとは居間のことだから、元来は家族団らんの部屋のはずだが、この手の「リビング」と称する部屋は、実質的には客間ないしは応接室と考えられているようで、家族が夕食をとったり、食後にテレビを観たりして談笑するのは、和風畳敷きで台所兼居間として、炊事場に隣接した部屋があって、ここが事実上の居間だったりする。ちゃぶ台返しがあったりするのも、もちろんこの台所である(笑)

 それまで、和風の客間として掛け軸や一輪挿しが置かれていたりしたが、改装前に掲げられていた棟方志功の版画や武者小路実篤の色紙などは、トイレなどに引越しさせられてしまった。
 そして重厚な洋室応接間に改造された「リビング」には、主は無く、部屋に見合う客も来るわけが無いということになる。誰も部屋に入ることがなくても、週に一度ぐらいは誇り払いの掃除が必要で、その分、一家の主婦の仕事が増えただけというわけだった(笑)

0 件のコメント:

コメントを投稿