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Ⅷ【生活文化コラム】11.【赤尾の豆単など】

【生活文化コラム】11.【赤尾の豆単など】


 1960年代の終わりごろ、大学受験生としてひと並に受験勉強とやらをしていた。その当時の受験生に必携のポケット本が、「赤尾の豆単」だった。赤尾好夫編の豆単は正式名称「英語基本単語集」といい、なんと戦時中の1942年初版発行で、戦後の団塊世代の受験生が急増するなかで、受験本のロングベストセラーを続けた。

 1967年、団塊世代が受験世代に入り出した時に強力なライバルが登場した。新書版の「試験にでる英単語」がそれで、通称「でる単」「しけ単(関西など)」と呼ばれた。「赤尾の豆単」は、選りすぐった英単語をアルファベット順に並べたものだが、「でる単」では、出題頻度順あるいは受験における重要度の順に並べたところが画期的であった。

 赤尾好夫は戦前に「旺文社」を設立し、豆単以外にも「赤尾の英語の綜合的研究」など、英語を中心とした受験参考書の大ヒットを飛ばし、さらには「蛍雪時代」という受験雑誌を刊行するなど、戦後の受験ブームにのり旺文社を受験出版社の雄に育て上げた。

 実は14歳年上の兄がいて、1955年ごろに使っていた赤尾の綜合的研究の本が残っていた。赤鉛筆で真っ赤になった古い本だったが、それを使ってみた。赤尾の豆単も買ったし、シケ単も使ったが、結局私の英語は使い物にならないままに終わった(笑)

 高校から受験生の時期には、どうしても詰込みになってしまい、受験が終わるとすっかり忘れてしまうパターンも多い。しかし高校のカリキュラムはそれなりに精選されており、きちんと学んでおけば、その後の人生の基礎的な教養となり、有益な思考法も身に付くものである。

 私の場合は、高校の教科書をつい近年まで残していた。ちょいと確認したいことがあると、かつて使った教科書でだいたいの見当が付けられる。つまり百科事典的に利用したわけだが、辞典類の単独の知識よりも、一旦学んだことのある流れに沿って調べる方が実のある理解が得られるものである。

 現在はインターネットなどで、いくらでも必要な情報が転がっている。問題はどのように情報を探すかであって、知識のベースが真っ白けの壁の様では、どこを探したらよいのか分からないし、見つけた情報もつなげる接点がないのですぐに忘れてしまう。

 高校レベルの教養は、その新たな知識を組み込む棚になるわけで、知識そのものは忘れても、すぐに検索すれば元の棚に戻せる。つまりは、知識を組み込む構造のようなものを、若い時期に形成しておくことだと思う。

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