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Ⅳ【食と文化コラム】04.京のお好み焼は・・・

【食と文化コラム】04.京のお好み焼は・・・


 遺愛寺の鐘は枕をそばだてて聴き、香炉峰の雪は簾をかかげてこれを看る。京のお好み焼はコテで喰う(笑)

 大阪が中心の関西風お好み焼きと、広島中心の広島風お好み焼きがあるのは有名だが、京風お好み焼きというのが、明確にあるわけではない。京風を名乗るお好み焼き店の説明を見ても、結局は「京都に店がある」というところに行きつくしかないようだ。

 関西風のお好み焼きは、いわゆる「練り焼き」が特徴で、少し硬めに練った小麦粉にキャベツやブタ・イカなどの具材を乗せ、それを練りこんだものを鉄板に広げて焼く。一方、広島風は「重ね焼き」が基本で、薄めにといた小麦粉をクレープのように鉄板に広げ、その上にキャベツやブタ・イカなどの具材を重ねのせてゆく。さらに上に、ゆるめの下地を軽く回しかけて、それから裏返す。

 広島焼には、その上に焼きそば麺を乗せて焼くのが必須と言われているが、それは近年になってからで、あくまで広島焼の特徴は、具材をかさね乗せて生地をかけてボリュームたっぷりなものを裏返し、生地でふさぐようにして、いわば具材を蒸し焼きにするところにあり、薄めの生地がとろみを残しているという食感にあると思われる。
 京都のお好み焼き専門店も、関西風の練り焼きを基本としながらも、それぞれの独自性を打ち出そうとして、いまや千差万別、さらにマヨネーズでデコレーションすることで、何が何やら分からなくなっている。仕方がないから、京都市内北部で育った私が、半世紀以上前の子供時代に食べた「京風お好み焼き」の様子を記述しておく。当然ながら、これをもって京風お好み焼きの代表と称するつもりは、まったくない(笑)

 店には、鉄板付きの4人掛けテーブルなどがあり、それに座って注文するが、出てくるものは、カップにメリケン粉を固めに練った生地を入れ、その上にキャベツなどのカット野菜、その上に豚やイカといった具が乗せてある。
 天かすや紅ショウガやネギなどは、脇のカップから好きなだけトッピングする。そして、柄の長めのスプーンでコネコネして、まるく鉄板に広げて焼く。この時、あまり平べったく押し付けないで、厚めに焼くのがコツ。片面が焼けたら、手のひら大のコテで、裏返してまた焼く。最後に表がえしてソースを塗る。

 脇のソースカップには、甘めのとんかつソースと辛めのウスターソースが2種類、あと青ノリ・カツブシ粉はかけ放題となっている。そして焼きあがったら、そのまま鉄板の上で、コテでカットしながら口に運ぶ。待ちきれないガキとかは、一部を切り取って、鉄板に押し付けて先に食べたりする。焼きあがっても皿に移したりはしないが、頼めば小皿や割り箸ぐらいは出してくれた。

 壁には手書きのメニューがあり、ブタ・イカがメインで、ほかに牛肉・エビ・タコ・牡蠣などにミックスなどもあるが、何のことはない、カップの上に乗せる具が違うだけなのである。街中の店舗付き木造住宅が多く、主婦の小太りのオバサンなどが一人で切り回していることが多い。小料理店や一杯飲み屋を切りもりするほど才は無さげな、素人風オバサンが多かったような気がする。

 夕方になると、もっぱら部活帰りのニキビ面中高生たちで賑わう。

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