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Ⅳ【食と文化コラム】07.上賀茂神社名物「やきもち」

【食と文化コラム】07.上賀茂神社名物「やきもち」


 京都今宮神社門前では、数百年を越す老舗の「あぶり餅屋」が、向かい合わせで競っているが、葵祭で有名な上賀茂神社の門前にも、「賀茂のやきもち」として知られる二店舗がある。神社前広場で一の鳥居の真向かいにある「葵屋やきもち総本舗」と、一方の「神馬堂(じんばどう)」は、神社の脇を通る旧鞍馬街道沿いに100mほど離れてある。

 葵屋は、目立つ場所に明るい店舗を構え、つねに観光客で賑わっている。神馬堂の方はというと、神社脇の旧街道にひっそりとあり、探して行かないと気が付かない。たまに前を通りかかっても、たいていは古風な木の雨戸で閉じられていることが多い。毎日、決まった数だけ焼いて、売り切れれば店を閉めるという方針で、昼過ぎにはおおむね閉まっているという状況である。

 葵屋は、総合和菓子店として、"やきもち"以外に"おはぎ"などなども置いているし、京都駅ビルや一部百貨店などにも置いてあるので、比較的買いやすい。神馬堂の方は、昭和色を色濃く残す店舗前で、朝早く開店前から並ぶしか確実な方法はなさそうだ。(大丸京都店に一部置いているという情報は聞いた)

 上賀茂神社裏には、伯母にあたるお婆さんが住んでいて、よくうちに遊びに来た。父親の一番上の姉で、親子ほど歳が違うのであるが、私生児であった父親が母親代わりに育ててもらったらしい。腰が直角に近く曲っていて、杖がわりに古い乳母車を押してくる。息子の嫁の愚痴を聞いてもらいに来るのだが、その「賀茂お婆さん」が手土産に必ず持ってくるのが「神馬堂のやきもち」だった。そんなわけで、子供の頃から神馬堂に馴染みがあった。

 神馬堂の店頭看板には、「平成九年 三代目主人敬白」として創業130年になる旨が書かれているので、今だと150年ということになる。葵屋のwebには、三代目の若主人の挨拶が掲示されているので、こちらも5、60年にはなると思われる。あぶり餅両店ほどではないが、ともに老舗と言えるだろう。

 大福餅を平べったく焼いて焦げ目をつけたような"賀茂のやきもち"だから、似たようなものは一般に市販されている。しかし、あのもちもち感のある薄皮に、ほんのり付いた焦げ目の香ばしい香りと、しっぽり上品な甘さの粒餡の組み合わせは、やはり"賀茂のやきもち"にしか無いと思われる。

 両店のどちらが良いと比較するものでもないが、あの昭和レトロ感たっぷりの神馬堂の店構えや、ちょいと滑稽感もうかがわせる神馬の描かれた包装紙は、上賀茂神社に参ったら土産はこれ、と思わせるものがある。詳細な食べ歩き記のブログがあったので、そちらにリンクしておく。
http://kitaoujikeizaikenkyusho.blog.jp/archives/2205125.html


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