【音楽関連コラム】07.グループサウンズというブーム
元祖GSの一角をになった「寺内タケシとブルージーンズ」は、テレビ出演でベンチャーズのヒットナンバーを披露することが多く、そのコピーバンドかと思われていたが、ブルージーンズの1964年での初のコンサートで、なんとベンチャーズが前座をつとめるほどのメジャーであったらしい。
「ベンチャーズメドレー」(寺内タケシ&ブルージーンズ)
一方「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」は、すでにバックバンドとして活躍していたが、ボーカルの井上忠夫をむかえて再編成、メロディーやハーモニーを重視した歌唱グループとして大ヒットした。メンバーは短髪でスーツ姿でステージをつとめ、GS=長髪=不良というイメージから免れたため、NHK紅白に連続出場を許された。その後、ムード歌謡路線にシフトしていった。
「ブルー・シャトー」(ジャッキー吉川とブルーコメッツ) https://www.youtube.com/watch?v=jzRphgmA4J8
もっともGSらしいGSとして、その礎を築いたとされるのが「田辺昭知とスパイダース」で、ビートルズ、ローリング・ストーンズなどブリティッシュ・ビート・グループに強く影響を受たグループであった。一方で、堺正章・井上順・かまやつひろしなどの軽妙なやりとりで、コミックバンド的な人気もあった。
「バンバンバン」(田辺昭知とスパイダース) https://www.youtube.com/watch?v=_lG9InOeIAc&t=0s&list=PLeK4RoQcX95DBouW1bTIaZFQMWag0i8dD&index=8
1965年のベンチャーズ来日コンサートで火がついたエレキブームは、安価な国産エレキギターの発売ともあいまって、全国各地の若者が、広場で納屋でテケテケテケとやりだした。そして翌年のビートルズ来日公演の頃には、ビートルズやローリングストーンズにならったヴォーカル・アンド・インストルメンタルという方向に収斂していった。
雨後の筍のように生まれた素人グループサウンズは、自分たちで作詞作曲、演奏しかつ歌うというスタイルで、地方の片田舎の若者が、一躍テレビ・レコードにデビューするという現象が出現した。それまでは、プロの歌手が専属バックバンドの前で、プロの作詞家作曲家の手になる曲をうたうというのが基本であったため、このような自作自演は画期的であった。
しかし当時の大手レコードレーベルは専属の著名作詞家・作曲家を抱えており、その道のプロの手になるものをレコード化するというシステムであったため、メジャーデビューするグループは、多くがそれに従わされた。そのため彼等オリジナルは、もっぱらローカルなコンサートやライブでしか演奏されないということになった。
並行して、静かなブームを起こしていたプロテスト・フォークのアーティストたちは、そういう商業ベースを徹底拒否し、テレビ出演もせず、ひたすらローカル・ライブでひそかなヒットを飛ばしていた。そういう流れを打ち破ったのがフォーククルセダーズで、加藤・北山・端田という稀有な才能を擁して、メジャー世界でも自作自演を貫いた。彼ら以降、多くのシンガーソングライターたちが、メジャーステージでも活躍するようになったと言える。
ヴィレッジシンガーズ/オックス/カーナビーツ/ゴールデンカップス/スパイダース/ジャガーズ/ブルーコメッツ/タイガース/テンプターズ/ワイルドワンズ(theなどは略)
とりわけ、1967年ごろのGS最盛期をリードしたのは、ジュリーこと沢田研二をボーカルとした「タイガース」と、ショーケンこと萩原健一を擁した「テンプターズ」だろうと思われる。これらグループもまた、メジャーデビューを果してからは、著名作詞作曲家の楽曲を演ずる商業エンタテナーとしてのスター、タレントであった。
「シーサイド・バウンド」(ザ・タイガース) https://www.youtube.com/watch?v=J6Ps9kFsPxA
「エメラルドの伝説」(ザ・テンプターズ) https://www.youtube.com/watch?v=DfSzKWWWgZM
プロの作家による曲は洗練されていて、広く大衆うけしてヒットを連発するが、一方で飽きられやすく、1968年後半になると衰退の兆しをみせた。その上に、GS=長髪=不良という短絡思考の大人たちの影響で、GSコンサートを観に行くと停学処分とする高校が続出したり、GSにはコンサート会場を提供しないという劇場や自治体ホールなどが多くなった。NHKなどは、長髪のグループには紅白などに出場を認めないといった愚行さえ行った。
1969年になると、人気グループから主要メンバーが相次いで脱退するなどして、グループの解散も増え、ムード歌謡など別路線に転向するグループなども現れ、人気は急激に下降した。同年夏を迎える頃には、完全にGSブームは終焉を迎え、ほとんどのグループが解散・自然消滅という流れをたどった。
その後、人気グループのリード・ヴォーカルなどは、解散後も歌手やミュージシャン、俳優、またタレントとして芸能界の第一線で活躍し続けているものも多い。また、他メンバーの多くも、俳優や作曲家、音楽プロデューサー、芸能事務所経営者等として、芸能界に関わっている。
かくしてグループサウンズは立ち消えていったが、その後の数多くのシンガーソングライターたちの出現地盤を提供し、プロとアマチュアの垣根を取り払った功績は大きい。そして、同時並行的にブームを為したフォークソング・グループなどと共に、後のニューミュージックやJポップの隆盛の基盤を築いたと言える。
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